作家情報
吉田 遠志/YOSHIDA Toshi
明治44年(1911)〜平成7年(1995)
日本 東京出身
略歴
吉田遠志は、新版画の巨匠として知られる吉田博の長男であり、弟は版画家の吉田穂高です。遠志は3歳の頃から絵を習い始め、13歳の頃より父から木版を学び、太平洋美術学校時代には油彩を学びました。1930年、博とともにインドやピルマ、マレーシアなど東南アジアを写生旅行。1936年には中国東北部、朝鮮半島を父とともに訪れます。1938年には太平洋画会に初入選し、以後同展に出品を続けます。戦後は1947年日展に「浅海の陽光」を出品。またアンデパンダン展にも出品します。1950年には太平洋画会を退会して「プラス美術家群」を創立。翌年、日本版画協会会員となりました。その後、ニューヨークのジャパン・ソサエティーの協力を得て、アメリカ各地で講演、伝統的木版画の技法紹介、展覧会などを行ったのち、欧州へ渡ります。1954年に弟で洋画家の穂高を伴い米国各地で講演会、展覧会を開催。その後もキューバ、メキシコ、東アフリカを訪れ、以後動物をモチーフとする版画を主に制作していきます。後にインド、オーストラリア、南極などへも旅行して各地の野生動物を描きます。1955年に長野県北安曇郡美麻村の小中学校の旧校舎を利用して「美麻文化センター」を創設し、木版画、ガラス細工、陶器などの技術指導を始めます。
遠志は絵本作家としても知られており、1982年より制作をはじめた「アフリカの動物絵本シリーズ」は全17巻におよび、「はじめてのかり」ではボローニャ国際児童図書展エルバ特別賞、「まいご」では絵本にっぽん賞、サンケイ児童出版文化賞、国際オーナーリスト賞を受賞しています。また、同シリーズは、フランスで翻訳出版賞、異文化理解貢献賞を受賞しました。
作品の特徴
吉田遠志の作品は絵の具の繊細な雰囲気と、モダンなイラストレーション的表現が評価されています。父がテーマとした自然への畏敬の念を受け継ぎつつも、その対象は風景にとどまらず、動物も多く描いています。全米をキャンピングカーでまわりながら、伝統木版画の技法を広く世界に普及させる一方で、野生動物を求めて南極やアフリカへ旅をし、動物と自然を主題とした優れた作品を手がけています。
また、絵本にっぽん賞、国際オーナリスト賞を受賞するなど、絵本でも有名な作家です。アフリカへの旅、取材を重ねて木版画で作られた動物絵本シリーズは、絵本と言うよりも画集と表現した方がいいのかもしれません。とても暖かな内容で現在でも人気の絵本です。
ニューヨーク近代美術館、大英博物館、ボストン美術館、シアトル美術館、ポートランド美術館等、各国の美術館に収蔵されており、その知名度は日本のみならず、世界的なものとなっています。